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  • 片頭痛治療の飛躍的進歩と問題点

    2022.02.13

    おはようございます。本日は、中野区医師会で頭痛診療の講演を行なった際に発表しました当院での片頭痛の最新治療薬である抗CGRP製剤の使用実績と有効度、満足度、問題点などについて記載します。

    片頭痛は約20年前にトリプタン製剤、いわゆるイミグランやマクサルト、レルパックスやアマージといった片頭痛特効薬(急性期の治療薬)が出現し、片頭痛の治療は劇的に改善され患者さんも減少するであろうと考えられておりました。しかし、片頭痛の患者さんは減少どころか逆に増加、また、薬物乱用性頭痛も増えました。

    「この後に仕事だから痛くなったら困る。だから予防的にトリプタン製剤を内服してます」という声が一番多く聞かれます。気持ちはすごくわかります。発作により動けない、嘔吐、生活支障度の低下、生産性の低下を招きかねないため内服してしまうのです。

    片頭痛は予兆期→前兆期→頭痛期→回復期という経過を歩み、前兆期までが約1時間、頭痛発作期は4−72時間と人それぞれです。1回の発作で2−3日調子悪くなると考えると、片頭痛発作が月に2−3回ある人は、月に4−9日間程度、生活支障度が低下してしまう日が存在します。月の約1/3です。

    この生活支障度を改善させるのが、片頭痛の予防療法です。当院では頭痛ガイドラインに則り、月に3回以上の生活支障を有する患者さんには、一度予防療法をお勧めして行なっております。当院ではまずは内服による予防療法を行い、効果不十分の患者さんに「抗CGRP注射製剤」をお話しします。

    当院で使用可能な抗CGRP製剤はエムガルティ、アジョビ、アイモビークと全て使用可能です。エムガルティとアジョビは CGRP(カルシトニン遺伝子関連タンパク)、要は痛み物質の大元のタンパク質が放出された場合に、それに結合して中和してしまうものです。イメージとしてはワクチンみたいなものです。アイモビークは CGRP(痛み物質の大元タンパク)がその受容体(受け皿)にくっつく前にその受け皿を蓋してしまう(失活させる)というものです。

    これら3つの注射製剤はいずれも皮下注射です。

    今までの予防薬(今も内服での予防薬でもある)は、片頭痛のメカニズムがスタートしてしまった後に、痛みが出ないように予防するものでした。そのため、すり抜けて痛みが出てしまう事が多く、それゆえ痛み止め(鎮痛剤やトリプタン、市販薬)が手放せない状況が続いていました。これが最近の20年間の医療の歴史です。

    しかし、昨年4月より注射製剤が認可された事で、今まで片頭痛で悩んでいた患者さんが徐々に注射製剤へ切り替え、その実績が一部出てきました。

     

    抗 CGRP製剤使用実績(←クリックしてください)

     

    片頭痛の患者さんは当院にて現在およそ3000人程度診療しております。注射製剤は昨年末までで99名の患者さんに使用しました。約3.3%です。

    上記表で見ていただくとお分かりの通り、大変優秀な製剤で、頭痛で悩んでいた方にとってはまさにパラダイスな現状となっています。

    では、なぜ当院でもっと積極的に普及させないのか?

    問題点が2つあります。

    一つは、注射を月に1度来ていただく事。二つは、薬価が高く3割負担の患者さんでも窓口支払いが1万3千円近くになる事。この2つの理由に尽きます。

    片頭痛の年齢ピークは20-40歳台です。一番忙しく、一番経済的な余裕が無い年齢層です。その患者さんに強く勧めることは、薬剤のメリットを超えるデメリットが存在しているとも言えます。

    お薬自体は効果は絶大、副作用はほとんど無しと申し分ないのです。ですが、値段が高いのです。

    なんとか、薬価が改定され、1人でも多くの患者さんに使用していただき、トリプタン製剤の濫用を減らし、勤務欠勤、不登校を無くし、生活支障度の低下が無いようにしたいと日々診療で思います。

    それまでは、今までの予防薬を何とか駆使して組み合わせながら、患者さんの一番苦しまないオーダーメード予防セラピーを患者さんと共に歩み戦っていきます。

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