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  • マブ(mAb)って知ってますか?

    2026.09.06

    こんにちは。院長のKです。

    最近、医療の世界で「○○マブ」という名前の薬を耳にすることが増えました。

    デノスマブ、デュピルマブ、ガルカネズマブ、フレマネズマブ、エレヌマブ、レカネマブ、ドナネマブ……。

    「マブ(mAb)」とは、monoclonal antibody=モノクローナル抗体のことです。

    実はこのmAb、脳神経領域だけの話ではありません。

    骨粗鬆症では骨代謝に関係する分子を標的とした抗体薬が使われ、アトピー性皮膚炎をはじめとするアレルギー・免疫疾患でも、特定のサイトカインやその受容体を狙った抗体治療が広く行われるようになりました。

    つまり現代の医療は、

    「症状に対して薬を使う」時代から、
    「病気を引き起こす仕組みを解明し、そこを狙い撃ちする」時代へ

    少しずつ変わってきています。

    そして、その変化を私が日々の診療で最も強く感じているのが、私の診療の主軸である片頭痛と近年注目されているAlzheimer病です。

    片頭痛診療を変えたCGRP!!

    片頭痛の世界では、CGRPという分子を標的とする抗体薬が登場しました。

    現在、

    ガルカネズマブ
    フレマネズマブ
    エレヌマブ

    という3種類が使われています。

    かつて片頭痛治療といえば「頭痛が起きたら薬を飲む」というイメージが強かったと思います。

    しかし今は違います。

    「痛くなった頭痛を止める」だけではなく、
    「頭痛そのものを起こりにくくする」。

    この考え方が、CGRP関連抗体薬によって一気に現実のものになりました。

    先日、このブログでもご紹介しましたが、朝日新聞の「患者を生きる」でも片頭痛が取り上げられました。

    片頭痛は単なる「頭痛持ち」ではありません。

    仕事、学校、家事、育児、旅行――。

    発作によって、その人の大切な時間が失われてしまう病気です。

    だからこそ私たちが治療したいのは、頭痛の日数だけではなく、その人の生活そのものなのだと思います。

    そして、Amyloid βへ

    もう一つ、いま大きく変わっているのが認知症診療です。

    Alzheimer病に対する

    レカネマブ
    ドナネマブ

    という抗Amyloid β抗体が登場しました。

    これまでのAlzheimer病治療は、低下した認知機能に対する症候的な治療が中心でした。

    それに対してこれらの薬剤は、Alzheimer病の病態に関係するAmyloid βを標的として、病気の進行そのものを遅らせることを目的とする「疾患修飾療法」です。

    もちろん、Alzheimer病を完全に元に戻す薬ではありません。

    それでも、

    「認知症になってから症状に対応する」
    から
    「早期に見つけ、病態そのものに介入する」へ。

    これは認知症診療にとって非常に大きな転換だと思います。

    実は、診療所で行っている施設はまだ多くありません

    一方、抗Amyloid β抗体治療は、薬を処方すれば終わりという治療ではありません。

    適応を慎重に判断し、Amyloid β病理を確認し、MRIなどによってARIA(アミロイド関連画像異常)を監視するなど、導入から治療後のフォローまで厳格な管理体制が必要です。

     

    そのため施設要件も厳しく、実際には大学病院や大規模な総合病院などで行われていることが多く、診療所で治療まで行っている施設はまだ限られています。

    しかし私は、ここに一つ考えるべきことがあると思っています。

    認知症こそ、「身近な医療」で診る意味がある

    認知症は、一度診断して終わる病気ではありません。

    「最近、同じことを何度も聞くようになった」

    「薬の管理が少し怪しくなってきた」

    「車の運転をどうしよう」

    「家族への怒りっぽさが出てきた」

    「介護サービスをそろそろ考えた方がいいだろうか」

    こうした小さな変化を、患者さんやご家族と一緒に長く見ていく病気です。

    だから私は、認知症こそ地域の身近な診療所で診る意味が大きい疾患だと思っています。

    大きな病院には、大きな病院にしかできない医療があります。

    一方で診療所には、

    入りやすい。
    相談しやすい。
    通いやすい。
    そして、長く付き合える。

    という強みがあります。

    最新の治療を行うことと、身近な医療であること。

    この二つは、本来相反するものではないはずです。

    「マブ」が変えたもの

    骨粗鬆症からアトピー性皮膚炎、片頭痛、そしてAlzheimer病まで。

    対象となる病気はまったく違います。

    しかし「mAb」という治療技術には、一つの共通した思想があります。

    病態を理解し、原因に関係する特定の分子を狙う。

    片頭痛ではCGRPを標的として、発作に奪われる時間を減らす。

    Alzheimer病ではAmyloid βを標的として、その人らしく過ごせる時間をできるだけ長くする。

    私はこの二つの治療をしていると、結局、私たちが守ろうとしているものは同じなのではないかと思うことがあります。

    それは、

    「その人の時間」です。

    頭痛のない一日。

    仕事ができる一日。

    家族と普通に話せる一日。

    自分らしく生活できる一日。

    医学の進歩によって、これまで「仕方がない」と考えられていた時間を、少しずつ取り戻せるようになってきました。

    CGRPからAmyloid βへ。

    mAbが変えているのは、薬だけではありません。

    脳神経疾患を、
    「起きた症状に対応する医療」から、
    「病態を標的にして未来を変える医療」へ。

    私たちの診療所も、地域の身近な存在でありながら、こうした新しい医療を患者さんに届けられる場所でありたいと思っています。

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