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  • 脳卒中連携の会

    2024.03.24

    こんばんは。院長のKです。先日、中野区医師会主催研究会にて脳卒中連携の会がありました。講演演者は当院にも金曜日に勤務いただいている東京警察病院脳卒中センター脳血管内治療科の松原啓祐先生。その座長を私が務めました。

    講演内容を医師会新聞に寄稿しましたので、ご紹介致します。

    ・・・・・・・・・・・・・・以下新聞記事・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

    本日は東京警察病院脳卒中センター、脳血管内治療科の松原啓祐先生にご講演をいただいた。

    松原医師は現在東京警察病脳卒中センター脳血管内治療科の医長で、脳卒中の最前線で活躍されている医師である。脳血管内治療というと馴染みが薄い先生もいらっしゃると思うが、簡単に言いますと脳疾患のカテーテル屋である。以前は開頭しないとできなかった治療が、カテーテルを用いて大腿部の付け根に約3mmの切開を置いてカテーテルを挿入するだけであり、患者にとって非常に侵襲性が低く体にも優しい。そんなカテーテル治療を専門とする松原医師に、中野区における脳卒中拠点病院での取り組み、地域連携のあり方を実際の治療症例など交えてお話しいただいた。

    特に脳卒中センターにおいて、脳梗塞超急性期の治療をいかに迅速に行えるかは病院としても課題の一つだそうだ。「脳梗塞超急性期の治療は時間との戦いです」と松原医師も語気を強める。脳梗塞発症から病院到着までは患者マターになるが、病院に到着してからの診察(初療)、検査診断、治療開始に関しては病院内の各部署コメディカルスタッフとの連携プレイが重要となる。現在は発症4.5時間までの脳梗塞疾患に対するt-PAの有効性があるとされ、発症4.5時間まではt-PAを使用することができるようになっている。t-PAは静脈から点滴静注するため、簡便にできる利点があり、東京都では東京消防庁において「脳卒中Aコール」というt-PAを目的とした救急体制が確立している。 さらに、2010年にはt-PAを投与したが無効であった患者、あるいは、何らかの事情によりt-PAを投与することができなかった(t-PA投与の禁忌事項に該当してしまった)患者に対し、血管内治療であるカテーテルを用いた機械的血栓回収療法が保険適応となり、脳梗塞治療が大きく変わったとのことだ。「当院はその拠点病院としてt-PAはもちろんカテーテルでの血栓回収を行うcomprehensive stroke centerとして多くの患者を迅速に受け入れるよう体制づくりをしています。」と松原医師は地域連携に意気込む。例えtPAやカテーテル治療とならなかった患者に対しても抗血栓薬を用いた保存的加療を病型診断に基づき早期に抗血栓薬を導入し加療する。

    講演では連携開業医の医師より紹介となった脳梗塞の患者さんの症例を提示さた。診療所で脳梗塞を疑われ、救急搬送された男性患者であった。病院到着時は左麻痺と構音障害が強い状況であった。頭部MRI/MRAでは右中大脳動脈の閉塞でtPA施行しすぐに血栓回収のカテーテル治療を行いました。大きな血栓が取れすぐに血管は再開通しました。患者は直後より神経症状が改善しわずか11病日で自宅退院となり、現在は紹介元の診療所でフォローされているようだ。

    「No recanalization No walk」と言われるように、再開通無しには神経学的予後が改善しないことはいくつもの論文でevidenceが出ている。「脳卒中を疑いましたら1秒でも早く、紹介し、治療に入れるような地域連携づくりが必要であると思います。Time is Brainなのです。」と松原医師は繰り返す。

    また、警察病院では脳卒中のための急性期集学的治療を行うStroke care unit(SCU)を2018年に立ち上げた。S C Uには24時間脳卒中の専門医が常駐、また専属の理学療法士(P T)やケースワーカーを置かなければならない、看護師の体制も一般病棟と異なるなど施設基準が非常に厳しく設定されている。中野区、杉並区、新宿区が城西地区としての救急管轄になりますが、S C Uを有しているのは警察病院を含めたった2病院なのだそう。それだけ脳卒中拠点病院としての期待が高まる。脳卒中センターは脳神経外科、脳血管内治療科、リハビリテーション 科を中心に運営している。脳血管内治療科は神経内科専門医、脳神経外科専門医、救急科専門医と様々な基礎診療科をベースに持った医師で結成されている。そのため、様々な視点から治療方針を立て、患者の全身管理を行えるところも強みであるという。

    脳動脈瘤に対する脳動脈瘤コイル塞栓術はカテーテル治療の大きな分野である。脳動脈瘤手術は救急ではくも膜下出血の患者に認める破裂脳動脈瘤をプラチナ製のコイルで充填し血栓化することで再出血を防ぐのである。また、近年はデバイスの進歩により、今までは治療困難とされた20mmを超える巨大脳動脈瘤においても治療を積極的に行うようになっているとのこと。PipelineをはじめとするFlow diversion deviceの登場による。目の細かいステントを動脈瘤部の血管に留置することで、血流の流れを変化させ動脈瘤内への血流を遮断させ血栓化を促します。それにより脳動脈瘤が死活化する仕組みのようだ。

    最後に、警察病院では病院救急車を導入する予定であるという。運用は検討中であるが、より強固な病病・病診連携を築くツールとなることは間違いなさそうであった。症状の如何に問わず、判断がつきにくい患者など、少しでも緊急性が疑わしい場合には是非紹介したい拠点病院であって欲しい。

    2024年3月15日 中野区医師会館にて

    松原啓祐医師

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